クライシス

小さく折り畳まれた手紙に
私が期待していたものは
同じく小さな希望だった

はずだった

唯一縋れる、形あるものに
私はそれを託していたけれど
違っていたんだ
私が追っていたのは背中なんかじゃなかった

顔を思い出せなくなって
声を忘れて
それは私の中で人と言う形では無くなって
記憶とは別の場所に、

憎しみを外に出さないように
怒りの矛先が向かう場所に
愛しさで傷つかないように
優しさに満ちた幻想の場所に
未来に押し潰されないように
過去に還れる場所に

そう、なったんだ

私を統制する何かだったんだ
私を守るシールドでありつづけたんだ

それは人の形をした誰かじゃない
それは私だったんだ

信じないように
気付かないように
憎まないように
愛さないように

闇と言う希望の中で
私は誰かを追うフリをしながら
盲目を演じていた

殻は私で
壁は私で
言い訳には絶好の場所だった

***

私は何処だ
私は誰だ
再びのアイデンティティ・クライシス
自分を否定するのが怖くて
今日も何も考えないことを考える
頑張らない頑張り
悩まない悩み

やらなくちゃ
やらなくちゃ

今を生きることが
ポジティブとは限らない
今を生きるしかないんだから

過去に生きてる人が
本当に過去を生きられるわけじゃないんだから

いきることは、いきを、すること

すー


はー


すー


はー


深呼吸したら

すこしだけ、私で在れた気がした。