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気まぐれ更新、思いつき日記
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「きっと後悔するよりも先に、さっさと気を失えるでしょう?」

高所恐怖症の彼女に、
なぜ好んでこんな高い部屋を借りるのかと聞いたら、返ってきた返事がそれだ。

冗談だろうと茶化すように肩を竦めた僕に、
本気よ、とでも言いたげに彼女は顔をそむけた。

「なんで飛び降り?」
高いところ、嫌いなんだろ?

「嫌いよ、だけど、痛いのはもっと嫌だし、汚いのも嫌」
だから、手首を切るとか、
首を吊るとか、そんなやり方はナシなの。

下唇を左手でつまむように触りながら
眉間に皺を寄せた彼女の真剣な表情に
冗談だと思いこみたかった僕の思考は、揺らがされる。

真面目な発言をするときの顔だ。


嘘をつく犬なんているのかしら。

花に目があったら、どこを向くと思う?

口があったら私綺麗でしょ、っていうのかしら。

どうして裸で町を歩いたら犯罪になるの?


彼女はいつだって真面目だ。

「マンションから飛び降りたって、遺体は綺麗じゃないよ」
そう言って意図的に視線を逸らすと、
彼女は小さく息を吐いた。
「知ってる」
視界の端で、彼女が気だるげに腰を上げ、
窓の方へと歩いていく。

カーテンを開ける音がした。


「初めてこの部屋に来たとき思ったの。ここなら飛べるって」



沈黙が続いた。
別に返答に困ったわけじゃない。
この場で、きっと言って欲しいのであろう言葉は分かっていたけれど、
だからこそ思い通りになんてなってやるもんかと思った。


「どうして飛ばないの、って」
聞かないのね。


ほら、そうやっていつも
僕を試すように笑う。

誰が聞いてやるものか。

そんな女に、用はない。
飛びたきゃ勝手に飛べばいい。

そんなことより
「腹減ったよ」


さっき食べたばかりじゃない、と笑って
彼女は冷蔵庫からチーズケーキを取り出した。


少し強い睡眠薬
きっと生きる理由なんてそんなもん。
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HN:
アサキ
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/04/30
職業:
大学生
趣味:
物語作り、クレーンゲーム、四葉探し、写真
自己紹介:
Y浜の大学で演劇ばかりやっていたら
いつの間にやら
モラトリアムは終わり、社会人に。
コメントくれたら小躍りして喜びます。
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